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食品のDNA分析(遺伝子検査)に関する用語解説です。
ご不明な用語の確認にご活用ください。
あ行
アーキア
原核生物の一ドメインで、細菌とは異なる系統です。高温、高塩、強酸性など極限環境に生息するものが多く、一部の特徴が真核生物に似ています。
アセンブリ
次世代シーケンサーなどで得られた短いDNA断片(リード)を、重複部分をもとに連結して長い配列に再構築する過程です。ゲノム解析の重要なステップです。
アノテーション
ゲノム配列上の遺伝子やその他の機能的要素の位置や機能を特定し、注釈を付ける作業です。ゲノム解読後の重要な過程として生物学的意味を明らかにします。
アミノ酸
タンパク質を構成する基本単位で、20種類の標準アミノ酸があります。それぞれが特有の性質を持ち、タンパク質の構造と機能を決定する重要な役割を担っています。
アミノ酸配列
タンパク質を構成するアミノ酸の並び順です。DNAの情報が翻訳されて決まり、タンパク質の立体構造と機能を決定します。
アレルギー物質
免疫系が過剰反応を示す物質です。食品中のタンパク質などが該当し、遺伝子組換え食品の安全性評価でも重要視されます。
アレルゲン検査
食品中のアレルギー物質を検出する検査です。特異的抗体を用いたELISA法やPCR法などが用いられ、アレルギー患者の安全確保に重要な役割を果たしています。
安全性審査
遺伝子組換え食品などについて、人体や環境への影響を科学的に評価する過程です。厚生労働省などの規制当局が実施し、市場流通の可否を判断します。
安全性審査済み
遺伝子組換え食品などが、法律に基づく安全性審査を受け、問題がないと確認された状態です。この認証を受けたものは市場での流通が許可されています。
安全性未審査
遺伝子組換え食品などが、まだ法律に基づく安全性審査を受けていないか、完了していない状態を指します。国内では原則として流通が認められていません。
一塩基多型
ゲノム上の一カ所の塩基が個体間で異なる変異です。SNPと略され、個体識別や関連解析などに広く利用されています。
遺伝子
DNAの一部で、特定のタンパク質やRNAを作るための設計図となる領域です。生物の形質や特徴を決定し、親から子へと受け継がれる遺伝情報の基本単位です。
遺伝子型
生物が持つ特定の遺伝子の組み合わせパターンのことです。DNAレベルでの遺伝情報を示し、親から子へと受け継がれます。
遺伝子組換えイベント
特定の生物に対して行われた個別の遺伝子導入操作のことです。各イベントは固有の特性を持ち、規制や管理のために識別コードが付与されることがあります。
遺伝子組換え技術
生物のDNAを人為的に改変する技術の総称です。外来遺伝子の導入や、既存遺伝子の改変などが含まれます。
遺伝子組換え系統
特定の遺伝子組換えイベントを持つ生物の系統です。同じ遺伝子組換えを持つ個体の集団で、害虫抵抗性や除草剤耐性などの特性を持つように開発されています。
遺伝子組換え構築物
生物に導入するために人工的に設計・構築されたDNA配列です。目的遺伝子だけでなく、プロモーターやターミネーターなど遺伝子発現を制御する要素も含まれています。
遺伝子組換え混入率
食品や飼料中に含まれる遺伝子組換え体の割合を示す値です。定量PCR法などで測定され、表示規制の基準値として用いられています。
遺伝子組換え食品
遺伝子組換え生物から作られた食品や、遺伝子組換え技術を用いて製造された食品添加物を含む食品を指します。
遺伝子組換え食品検査
食品中の遺伝子組換え体の有無や混入率を調べる検査です。PCR法などを用いて特定の遺伝子配列を検出し、表示の適正さを確認します。
遺伝子組換え生物
人為的に遺伝子を改変または導入された生物です。特定の形質(耐病性、高栄養価など)を付与するために作られます。
遺伝子組換え体
DNAを人為的に改変された生物のことです。目的の遺伝子を導入したり、既存の遺伝子を改変したりすることで、新たな特性を持たせています。
遺伝子組換え表示
遺伝子組換え食品であることを消費者に知らせるための表示制度です。日本では食品表示法に基づき、一定の条件下で表示が義務付けられています。
遺伝資源
人類にとって実際または潜在的な価値がある遺伝物質のことです。作物、家畜、微生物など、多様な生物が含まれます。
遺伝子検査
DNAを分析して、特定の遺伝的特徴や変異を調べる検査です。疾患のリスク評価、親子鑑定、品種識別など様々な目的で利用されています。
遺伝子サイレンシング
特定の遺伝子の発現を抑制する現象または技術です。RNAi(RNA干渉)などのメカニズムを利用して、標的遺伝子の機能を一時的に阻害します。
遺伝子導入
外来のDNAを生物の細胞に導入する技術です。遺伝子組換え生物の作製や遺伝子治療などに利用されています。
遺伝子ドライブ
特定の遺伝子が通常の遺伝法則よりも高い確率で次世代に伝わるように操作する技術です。害虫駆除などへの応用が研究されていますが、生態系への影響も懸念されています。
遺伝子配列
DNAやRNAの塩基の並び順のことです。生物の設計図として機能し、その配列の違いが生物間の多様性を生み出しています。
遺伝子マーカー
生物の特定の形質や遺伝的特徴と関連するDNA領域です。品種識別や親子鑑定、疾患リスク評価などに利用され、育種や医療分野で重要なツールとなっています。
遺伝子領域
ゲノム上で特定の機能を持つ区間を指します。タンパク質をコードするエクソンや、調節に関わるプロモーターなど、様々な機能的要素を含んでいます。
遺伝的性質
DNAによって規定され、親から子へ伝わる生物の特性です。形態、生理機能、行動特性など様々な形質が含まれます。
遺伝的特徴
DNAによって規定される生物の特性のことです。外見的形質から分子レベルの特性まで、親から子へ伝わる性質を指します。
遺伝法則
形質が親から子へ伝わるパターンを説明する原理です。メンデルによって発見された優性・劣性や分離の法則などがあります。
陰性対照
実験において、分析対象の物質や現象が存在しないことがわかっているサンプルです。検査法が正しく機能していることの確認に用います。
インターカレーター
DNAの二重らせん構造の間に挿入される色素や化合物です。エチジウムブロマイドなどが代表的で、DNA可視化や電気泳動での検出に利用されます。
イントラジェニック
同種または近縁種の遺伝子のみを利用した遺伝子組換えの方法です。発現量をコントロールするなど、シスジェニックよりも操作の自由度が高い特徴があります。
ヴィーガン
動物性食品を一切摂取しない食生活や思想を指します。動物福祉や環境保護の観点から選択される場合が多く、食品表示においても重要な情報となっています。
エクソン
遺伝子の中で、最終的なmRNAに残りタンパク質をコードする部分です。イントロンと交互に配置されている場合が多いです。
エチジウムブロマイド
DNAの二重らせん間に挿入されて蛍光を発する色素です。電気泳動後のDNA検出に使われますが、変異原性があります。
エピジェネティクス
DNA配列の変化を伴わない遺伝子発現の調節機構を研究する分野です。DNAメチル化やヒストン修飾などが含まれ、環境要因による形質変化を説明します。
塩基
DNAやRNAを構成する基本単位の一部です。DNAではアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類があります。
塩基対
DNAの二重らせん構造を形成する相補的な塩基の組み合わせです。アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)がペアになります。
塩基配列
DNAやRNAを構成する塩基(A、T、G、CまたはA、U、G、C)の並び順のことです。遺伝情報の本体であり、生物の特徴や機能を決定づける重要な情報です。
オピオイド様物質
モルヒネのような鎮痛作用を持つ物質やその類似物質の総称です。食品由来のペプチドの中にも弱いオピオイド様活性を持つものがあります。
親子鑑定
DNAの多型性を利用して、個体間の血縁関係を判定する検査です。SSR多型などの解析によって高精度な判定が可能です。
か行
解像度
系統解析や同定において、どの程度細かく生物群を区別できるかを示す指標です。使用するマーカー遺伝子や解析方法によって変わります。
改変
生物の遺伝情報や性質を人為的に変化させることです。遺伝子組換えや育種などの手法によって、目的の形質を導入します。
外来DNA
ある生物に本来存在しない、他の生物由来のDNA配列のことです。遺伝子組換え技術では、外来DNAを導入して新たな形質を付与します。
核酸
DNAやRNAなど、遺伝情報を担う生体高分子の総称です。生命活動の根幹をなす分子で、塩基、糖、リン酸からなる特徴的な構造を持っています。
学名
生物の国際的な正式名称で、ラテン語に基づく二名法(属名と種小名)で表記します。分類学上の位置を示し、世界共通の識別名として機能します。
カゼイン
牛乳や哺乳類の乳に含まれる主要なタンパク質群です。α、β、κなどの種類があり、チーズ製造の際に凝固する性質を持ち、重要な栄養源となっています。
可変領域
16SリボソームRNA遺伝子などに見られる、種間で配列の違いが大きい部分です。この領域を調べることで、生物種の識別が可能になります。
カルタヘナ法
正式には「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」で、遺伝子組換え生物の利用を規制する日本の法律です。
寄生生物
他の生物(宿主)に寄生して生活する生物です。宿主から栄養や住処を得て、多くの場合、宿主に悪影響を与えます。
機能的要素
ゲノム中で特定の生物学的機能を持つDNA領域です。遺伝子、プロモーター、エンハンサーなどが含まれます。
機能的領域
ゲノム中で特定の生物学的機能を持つ部分です。タンパク質をコードする領域や、発現調節に関わる配列などがあります。
共生生物
異なる種の生物が互いに利益を得る関係で生活しているものです。例えば、腸内細菌と宿主の関係などが該当します。
近縁種
進化的に近い関係にある生物種のことです。DNAの相同性が高く、形態や生態的特徴も類似していることが多いです。
クロマチン
真核生物の核内にあるDNAとヒストンタンパク質の複合体です。染色体の基本単位となり、遺伝子発現の調節に関わります。
クロマチンヘリカーゼ遺伝子
染色体のDNA-タンパク質複合体(クロマチン)構造を調節する酵素をコードする遺伝子です。鳥類などでは性別判定マーカーとして利用されています。
クロマチンヘリカーゼDNA結合タンパク質
クロマチン構造の変換に関わるタンパク質で、DNAの巻き戻しを助け、転写や複製を促進します。
蛍光信号
蛍光物質が特定の波長の光を吸収した後に放出する光のことです。リアルタイムPCRなどで、DNA量を測定する指標として利用されています。
蛍光データ
蛍光信号を数値化したデータのことです。リアルタイムPCRなどの分析機器から得られ、DNAやRNAの定量分析に使用されます。
蛍光物質
特定の波長の光を吸収し、より長い波長の光を放出する物質です。DNAやタンパク質の標識や検出に広く利用されています。
形質
生物の観察可能な特徴や性質のことです。体の大きさや色、生理的特性などが含まれ、遺伝と環境の影響を受けます。
形質転換
外来DNAを細胞に導入し、その細胞の遺伝的性質を変化させることです。遺伝子組換え生物の作出において基本となる技術です。
系統解析
生物間の進化的関係を推定する分析方法です。DNA配列などの比較から系統樹を作成し、生物の類縁関係を視覚化します。
系統樹解析
DNAやタンパク質の配列データを基に、生物間の進化的関係を推定し、樹形図として表す解析手法です。種の同定や進化研究に重要なツールとなっています。
系統分類
生物の進化的関係に基づいて分類する方法です。DNAやタンパク質の配列データを比較し、生物間の類縁関係を樹形図として表現します。
ゲノム
生物が持つ遺伝情報の全体を指します。DNAの全塩基配列とそこに含まれるすべての遺伝子を含み、生物のすべての設計図となっています。
ゲノム解析
生物のゲノム配列を決定し、その中から遺伝子を見つけ出したり機能を推定したりする研究です。生物の理解や医療、育種などに重要な情報を提供します。
ゲノム編集
CRISPR-Cas9などの技術を用いて、生物のゲノムを狙った位置で正確に改変する技術です。従来の遺伝子組換えよりも精密で、様々な応用が期待されています。
ゲル
電気泳動などに用いられる半固体の支持体です。アガロースやポリアクリルアミドでできており、分子を大きさで分離します。
ゲル撮影データ
電気泳動後のゲルを撮影して得られた画像データです。DNAやタンパク質のバンドパターンを記録し、サイズや量の分析に用いられます。
原核生物
明確な核膜を持たない生物群です。細菌とアーキアが含まれ、DNAは細胞質内に直接存在しています。単純な細胞構造を持ちます。
検出限界
分析方法で検出できる最小量や最低濃度のことです。これより低い量では信頼性を持って検出できないとされ、検査法の性能を表す重要な指標です。
検体
検査や分析の対象となる試料のことです。食品検査では、市販食品や原材料、製造工程のサンプルなどが検体として使用されます。
交差汚染
検査や製造過程で、ある検体や製品から別の検体や製品へ意図せず物質が移行することです。検査結果の信頼性や食品安全に影響するため、防止が重要です。
交雑種
異なる品種や種が交配してできた個体のことです。品種改良で意図的に作られる場合と、自然環境で偶発的に生じる場合があります。
酵素
生体内の化学反応を促進するタンパク質触媒です。特定の基質に作用し、生命活動に必要な様々な反応を効率よく進行させます。
抗体
免疫系が産生するY字型のタンパク質で、特定の抗原に結合する特異性を持ちます。免疫反応や検査技術に利用されています。
公定法
行政機関によって正式に認められた検査方法のことです。食品検査などでは、標準化された公定法を用いることで、検査結果の信頼性と互換性が保証されます。
コードする
遺伝子がタンパク質の設計図としての情報を持つことを表す表現です。DNAの塩基配列がアミノ酸配列を決定しています。
国際塩基配列データベース
DDBJ、EMBL、GenBankなど、世界中の研究者がDNA配列データを登録・共有する公的データベースです。研究基盤となる重要な科学インフラです。
コピー
DNAの複製によって作られた同一配列の複製物を指し、DNAを数える単位にも使われます(1コピー)。
混入許容値
意図しない物質の混入が許容される最大値のことです。遺伝子組換え食品の表示規制などでは、一定値以下の混入は表示不要とされる場合があります。
混入比率
全体に対する特定成分の混入量の割合を示す値です。遺伝子組換え体の混入率など、食品の品質管理や規制遵守の確認に利用されます。
コンフリクト
データや結果の間に生じる矛盾や不一致のことです。遺伝子解析などでは、異なる手法間や異なるデータベース間でコンフリクトが生じることがあります。
さ行
細菌叢
特定の環境(土壌や腸内など)に生息する細菌群集全体を指します。マイクロバイオームとも呼ばれ、多様性や構成が研究されています。
細胞核
真核生物の細胞内にある、核膜で囲まれた構造体です。DNAを含み、遺伝情報の保管と発現制御の中心となっています。
査読論文
専門家による審査(査読)を経て学術雑誌に掲載された研究論文です。科学的信頼性が一定程度担保されており、エビデンスの基盤となります。
サンガーシーケンサー
DNA配列を決定するための機器で、ジデオキシ法(サンガー法)に基づく配列決定を自動化したものです。精度が高く、確認用に今でも広く利用されています。
サンガー法
DNAシーケンシングの古典的手法で、ジデオキシヌクレオチドを用いてDNA合成を途中で止め、その長さから配列を読み取る方法です。精度が高い特徴があります。
産地判別検査
食品の原産地を科学的に判定する検査です。DNA分析や安定同位体比分析などを用いて、表示の真正性を確認し、食品の信頼性確保に役立てられています。
シーケンサー
DNA配列を自動的に読み取る装置の総称です。サンガー方式の従来型と、大量の配列を並列処理する次世代型があり、生命科学研究の基盤技術となっています。
試験法
特定の分析や検査を行うための手順や方法のことです。再現性と信頼性を確保するため、試薬、条件、判定基準などが詳細に規定されています。
シスジェニック
同種または交配可能な近縁種の遺伝子のみを導入する遺伝子組換え技術です。異種の遺伝子を含まず、理論上は自然交配によっても起こりうるため、従来の遺伝子組換えより受け入れられやすいとされています。
雌性染色体
雌に特異的な、または雌の性決定に関わる染色体のことです。哺乳類ではX染色体、鳥類ではW染色体がこれに相当します。
次世代シーケンサー
従来のサンガー法と比較して大量のDNAを高速に読み取ることができる装置です。短時間で膨大な遺伝情報を解析でき、様々な生物研究や医療診断に利用されています。
ジデオキシヌクレオチド
3’位に水酸基がないヌクレオチド誘導体で、DNA鎖の伸長を停止させます。サンガー法のDNA配列決定に用いられます。
ジデオキシ法
DNA塩基配列決定法の一つで、鎖伸長の途中で停止するジデオキシヌクレオチドを利用します。サンガー法とも呼ばれます。
シトクロームcオキシダーゼサブユニットI遺伝子
ミトコンドリアDNAに存在する遺伝子で、細胞呼吸に関わる酵素の一部をコードします。動物のDNAバーコーディングに利用されます。
シトクロームb遺伝子
ミトコンドリアDNAに存在する遺伝子で、電子伝達系の重要な成分をコードします。種の系統解析や識別に利用されます。
雌雄判別検査
生物の性別をDNA検査によって判定する方法です。性染色体上の遺伝的マーカーを検出することで、外見からは判断が難しい場合でも正確に雌雄を判別できます。
種間識別率
異なる生物種を正確に区別できる割合を示す指標です。DNAバーコーディングなどの手法を用いて種を同定する際の精度を評価するために使われます。
宿主
寄生生物や共生生物、ウイルスなどが生息または増殖する生物体のことです。遺伝子組換え実験では、外来遺伝子を導入する生物も宿主と呼びます。
樹形図
生物の進化的関係を枝分かれする木のような図で表したものです。系統解析の結果として作成され、種間の類縁関係を示します。
種レベル
生物分類において、同一種として認識される分類レベルです。DNAによる同定では、特定の遺伝子領域の相同性などから種の区別を行います。
消化酵素
食物中の高分子を分解する酵素の総称です。デンプンを分解するアミラーゼやタンパク質を分解するプロテアーゼなどがあり、生物の消化を助けています。
食品表示法
食品の安全性と消費者の選択に資するため、成分や原材料、アレルギー物質などの表示を義務付ける法律です。遺伝子組換え食品の表示なども規定しています。
ショットガンシーケンシング
ゲノムDNAを小断片に分解し、ランダムに配列決定した後、コンピュータによって元の配列を再構築する手法です。次世代シーケンサーでよく使われます。
真核生物
核膜で囲まれた細胞核を持つ生物群です。動物、植物、菌類、原生生物が含まれ、細胞内にはミトコンドリアなどの小器官があります。
進化的に保存
生物種の進化の過程で、ほとんど変化せずに保たれている配列や構造のことです。重要な機能を持つ領域に多く見られます。
神経系
動物の体内で外部からの刺激を受け取り、情報を処理して反応を指令する器官系です。脳や脊髄からなる中枢神経系と、それ以外の末梢神経系に分けられます。
侵襲性
医療や研究において、生体に対する傷害や損傷の度合いを表す概念です。非侵襲的方法は生体への負担が少なく、安全性が高いとされています。
真正性検査
食品や製品が正しく表示通りのものであるかを確認する検査です。DNAなどの分子マーカーを用いて、偽装や混入がないことを科学的に検証します。
真度
測定値が真の値にどれだけ近いかを表す指標です。系統的な誤差(バイアス)がない状態が理想とされます。
スクリーニング
多数の対象から特定の条件に合うものを効率的に選別する作業です。遺伝子検査や食品検査などで、初期の段階で問題のある可能性があるものを絞り込みます。
スクリーニング検査
疾病や異常の可能性がある対象を、簡便かつ迅速に選別するための検査です。陽性と判定された場合には、より詳細な確定検査が行われます。
性決定
生物の性別が決まる仕組みのことです。多くの動物では性染色体(XY型など)によって遺伝的に決定されています。
性染色体
生物の性別を決定する染色体です。ヒトではX染色体とY染色体があり、通常、女性はXXの組み合わせ、男性はXYの組み合わせを持っています。
生体高分子
生物体内に存在する高分子化合物の総称です。タンパク質、核酸、多糖類、脂質などが含まれ、生命活動の基盤となります。
精度
測定値のばらつきの小ささを表す指標です。同じ条件で繰り返し測定した時の再現性の高さを示します。
生物種同定検査
生物の種類を科学的に特定するための検査です。DNAバーコーディングなどの手法を用いて、形態だけでは判別が難しい種の同定を行います。
生物多様性条約
地球上の多様な生物を保全し、その持続可能な利用と遺伝資源の公正な配分を目的とする国際条約です。1992年に採択され、生物資源の利用規制にも関わっています。
生物分類
生物を系統や特徴に基づいてグループ分けする体系です。種、属、科、目、綱、門、界の階級があり、分類学で研究されています。
染色体
細胞核内にあるDNAとタンパク質の複合体で、遺伝情報を担っています。生物種ごとに特有の数と形を持ち、細胞分裂時に顕微鏡で観察できる構造となります。
染色体転座
染色体の一部が別の染色体に移動する現象です。遺伝子の配置が変わることで、遺伝子発現に影響を与えたり、特定の疾患の原因となったりすることがあります。
前処理
本格的な検査や実験の前に行う準備作業です。試料の均質化、不純物の除去など、分析の精度を高めるために重要な工程です。
選抜マーカー
特定の遺伝子型や形質を持つ個体を選抜するために用いる指標です。遺伝子組換え生物の作出では、導入遺伝子と共に抗生物質耐性遺伝子などが利用されます。
相同性検索
DNA配列やタンパク質配列を既知のデータベースと比較し、類似したものを探す解析です。BLAST等のツールが利用されます。
属レベル
生物分類において、種よりも上位の分類単位です。類似した特徴を持つ複数の種をまとめたグループで、DNAレベルでも一定の共通点を持っています。
た行
ターミネーター
DNAやRNAの合成を終結させる信号や化学物質です。DNA配列決定法では、蛍光標識されたターミネーターを用いて塩基配列を読み取ります。
対照群
実験において比較の基準となるグループです。処理を施さない陰性対照や、既知の結果が得られる陽性対照を設けることで、実験結果の信頼性を高めます。
対立遺伝子
同じ遺伝子座における異なる形の遺伝子です。形質の多様性を生み出す源となり、集団内での遺伝的変異を表します。
多型
同じ種の中に見られる遺伝的な変異のことです。SNP(一塩基多型)などのDNA多型は、個体識別や集団遺伝学的研究に役立ちます。
妥当性検証
分析法や試験法が目的に適合しているかを科学的に評価するプロセスです。精度、真度、検出限界などの性能特性を確認し、方法の信頼性を保証します。
多様性解析
環境中の生物種の豊富さや分布を調査する手法です。DNA配列データから種の構成比率や多様性指数を算出し、生態系を評価します。
タンパク質
アミノ酸がペプチド結合で連なった生体高分子です。生命活動に必須の様々な機能(酵素、構造支持、情報伝達など)を担います。
通知法
法令に基づいて公的機関から通知された試験法や分析法です。食品検査などでは、通知法に従って検査を行うことで、統一された基準での評価が可能になります。
定性検査
特定の物質や遺伝子の存在の有無を調べる検査方法です。結果は「陽性・陰性」などの質的な情報として示されます。
定性スクリーニング
対象物質の有無を簡便に判定する選別検査です。多数の検体から陽性の可能性があるものを迅速に抽出するために用いられます。
定性的
「ある・なし」「はい・いいえ」など、質的な区分で結果を示す分析や評価の方法です。具体的な数値ではなく、存在や種類に焦点を当てます。
定量検査
対象物質の量を数値として測定する検査です。濃度や含有量など、具体的な数値で結果を示し、基準値との比較などに用いられます。
定量的
対象物の量や濃度を数値として測定する分析方法です。「どれくらいあるか」を具体的な数値で示すため、微量検出や変化の追跡に適しています。
定量PCR法
PCRの一種で、DNAの増幅を経時的に測定し、元のDNA量を定量する方法です。蛍光物質を用いてリアルタイムで増幅を検出します。
データ解析
収集したデータから意味ある情報を抽出するプロセスです。統計処理やパターン認識などの手法を用いて、データの傾向や関連性を明らかにします。
データサイエンス
データを科学的に分析し、有用な知見を導き出す学問分野です。統計学、情報科学、領域知識を組み合わせて、複雑なデータから価値を創出します。
データベース
系統的に整理・保存されたデータの集合体です。DNAやタンパク質の配列情報など、生物学的データを効率的に検索・利用するために重要なツールです。
デオキシリボ核酸
DNAの正式名称です。遺伝情報を担う生体高分子で、デオキシリボースという糖と4種類の塩基からなる二重らせん構造をしています。
電気泳動
荷電した分子が電場中で移動する現象を利用した分離技術です。DNAやタンパク質の大きさや電荷に応じて分離し、バンドとして可視化します。
同定
未知の生物や物質を特定し、分類体系の中での位置づけを明らかにするプロセスです。形態的特徴やDNA配列情報などを用いて行われます。
特異性
分析方法が目的物質のみを検出し、他の物質には反応しない性質です。検査の信頼性に関わる重要な指標です。
特異的
特定の対象だけに反応し、他のものには反応しない性質です。PCRプライマーや抗体などが、標的とする配列や分子だけを認識することを指します。
特異的リアルタイムPCR
標的DNAに特異的なプライマーを用い、増幅過程をリアルタイムに観察できるPCR法です。高い特異性と定量性を兼ね備えています。
突然変異
DNA配列が突発的に変化する現象です。塩基の置換、挿入、欠失などがあり、遺伝的多様性の源となる一方、遺伝病の原因にもなり得ます。
ドメイン
生物分類の最上位区分(アーキア、バクテリア、真核生物)のこと。また、タンパク質の機能単位となる立体構造のまとまりのことも指します。
トランスジェニック
異なる種の遺伝子を導入する技術です。自然交配では得られない特性を付与できる一方、種の壁を越えた遺伝子導入となるため、安全性評価が重視されます。
トリミング
試料やデータから不要な部分を取り除くプロセスです。シーケンシングデータでは、クオリティの低い端部分などを除去して解析精度を高めます。
トレーサビリティ
製品の生産や流通の過程を追跡できる仕組みです。食品では、原材料の生産地から消費者までの履歴を辿ることで、安全性の確保や問題発生時の対応に役立ちます。
な行
二重らせん構造
DNAの特徴的な形状で、2本の相補的な鎖が螺旋状にねじれて結合しています。ワトソンとクリックによって解明されました。
二名法
生物の学名を「属名 種小名」の二語で表す命名法です。リンネが確立し、国際的に統一された生物の呼び方として使われています。
は行
バイオインフォマティクス
生物学的データを情報科学的手法で分析する学問分野です。大量の配列データの解析や、遺伝子機能の予測などに用いられます。
バイオセーフティ
生物学的な危険から人や環境を守るための対策や規範です。病原体や遺伝子組換え生物の取り扱いに関する安全基準が含まれています。
配列データ
DNAやタンパク質などの分子の構成要素の並び順を記録した情報です。文字列として表され、様々な解析に利用されます。
破砕
生物試料を物理的に細かく砕くプロセスです。細胞を破壊して内容物を取り出すための前処理として、核酸やタンパク質の抽出時に行われます。
発現
遺伝子の情報がRNAやタンパク質として具現化されるプロセスです。遺伝子が活性化され、その情報に基づいてタンパク質が合成されることを指します。
ハプロタイプ
一緒に遺伝する傾向のある遺伝子やDNA配列のグループです。組換えが起こりにくく、まとまって遺伝します。
ハラール
イスラム法に則って許可されたものを指します。食品分野では、イスラム教徒が摂取可能な食品や、その製造・加工方法に関する規定があります。
バリデーション
分析方法が目的に適合していることを科学的に検証するプロセスです。精度、真度、特異性などの性能指標を評価します。
バンドパターン
電気泳動後のゲル上に現れるDNA断片などの帯状の模様です。サイズや量に応じたパターンが形成され、分析に利用されます。
ビーズ破砕
小さなビーズと試料を振動させて細胞を破壊する方法です。硬い組織や微生物からDNAやタンパク質を抽出する際に効果的な前処理法です。
ヒスチジン
20種類のアミノ酸の一つで、タンパク質を構成する成分です。側鎖にイミダゾール環を持ち、多くの酵素の活性中心に含まれています。
ヒストン修飾
DNAを巻き付けているヒストンタンパク質の化学的修飾です。アセチル化やメチル化などがあり、遺伝子発現の調節に重要な役割を果たします。
表現型
生物の観察可能な特性や形質のことです。遺伝子型と環境要因の相互作用で決まり、身体的特徴なども含みます。
標準法
分析や検査において、信頼性や再現性が確認された標準的な手法を指します。
標準和名
生物に付けられた日本語の正式名称です。学名(学術的な国際名称)に対応する日本での標準的な呼称として、分類学で使用されます。
標的特異的PCR
特定のDNA配列だけを増幅できるようにデザインされたPCR法です。特異性の高いプライマーを用いることで、目的の配列のみを選択的に増幅します。
品種判別検査
農作物や家畜などの品種を科学的に判別する検査です。DNAマーカーなどを利用して、外見だけでは区別が難しい品種間の識別を行います。
品種レベル
同一種内での遺伝的に異なる栽培品種や家畜品種のレベルです。DNAマーカーを用いた分析により、近縁品種間の差異を検出できます。
プライマー
PCRなどの核酸増幅反応で、DNAの合成開始点となる短い核酸断片です。標的配列に特異的に結合し、DNAポリメラーゼによる伸長反応の足場となります。
フリーマーチン
雌雄の双子で生まれた雌牛のうち、雄の影響で生殖器官の発達が阻害され不妊となったものを指します。胎内での血液混合を原因として、ホルスタイン種の1-2%で発生します。
プロモーター
遺伝子の発現を制御するDNA領域で、RNA合成の開始点の上流に位置します。いつ、どの程度遺伝子が発現するかを調節する重要な要素です。
プロリン
20種類のアミノ酸の一つで、タンパク質を構成する成分です。環状構造を持ち、タンパク質の立体構造に特徴的な折れ曲がりを形成します。
分子系統学
分子レベルの情報を用いて生物の進化的関係を研究する学問です。DNA配列の比較から系統樹を作成し、種の分類や進化の過程を推定します。
分別生産流通管理
特定の農産物を他の農産物と混ぜないように管理する仕組みです。遺伝子組換え作物と非組換え作物を区別して扱うために用いられます。
ベクター
外来遺伝子を宿主細胞に導入するための運び屋です。プラスミドやウイルスなどが用いられ、目的の遺伝子と共に細胞内に入り、複製されます。
ペッスル破砕
すり鉢とすりこぎ(ペッスル)を用いて試料を物理的に粉砕する方法です。組織からのDNA抽出などの前処理として、古くから用いられています。
ヘテロ
一対の遺伝子座に異なる対立遺伝子を持つ状態です。例えば「Aa」のように、同じ遺伝子の異なる型を両親からそれぞれ受け継いでいる状態を指します。
ペプチド
アミノ酸が複数個つながった分子です。タンパク質よりも小さく、ホルモンや神経伝達物質、毒素など様々な生理活性を持つものがあります。
変異部位
DNA配列において、塩基が置換や挿入、欠失などの変化を起こしている場所です。種間や個体間の違いを示す指標となります。
母性遺伝
母親からのみ子に伝わる遺伝形式です。ミトコンドリアDNAなど、細胞質に含まれる遺伝物質が卵細胞を通じて次世代に継承される現象です。
ホモ
一対の遺伝子座に同じ対立遺伝子を持つ状態です。例えば「AA」や「aa」のように、同型の遺伝子を両親から受け継いでいる状態を指します。
ホモジナイズ
試料を機械的に破砕して均質な状態にする処理です。DNA抽出の前処理など、生物試料の分析準備に用いられます。
ホモロジー検索
新たに解読されたDNA配列やタンパク質配列が、既知の配列とどれだけ類似しているかを調べる解析です。機能や進化的関係の推定に役立ちます。
ま行
マーカー領域
生物の同定や分類に用いられる特定のDNA配列です。種間で適度な変異があり、PCRで増幅しやすい領域が選ばれます。
ミトコンドリア
細胞内のエネルギー生産を担う細胞小器官です。独自のDNAを持ち、原則として母親からのみ受け継がれるため、系統解析や個体識別に利用されます。
ミトコンドリアDNA
ミトコンドリア内に存在する環状DNAです。母系遺伝し、変異が蓄積されやすいため、進化研究や生物種の同定、個体群の解析に用いられます。
無機物
炭素を含まない、または炭素と水素だけからなる化合物以外の物質群です。ミネラルや塩類など、生物の構成に必要な多くの成分が含まれます。
メチル化
DNAやタンパク質にメチル基(-CH3)が付加される化学修飾です。DNAのメチル化は遺伝子発現を抑制し、エピジェネティックな制御に関わります。
免疫系
生体を外敵から守るための防御システムです。抗体やリンパ球などが異物を認識して排除する働きを持ち、ワクチンはこの仕組みを利用しています。
や行
有機物
炭素を含む化合物の総称です。生物の構成要素となる糖質、脂質、タンパク質、核酸などが含まれ、生命活動の基盤となっています。
雄性遺伝
オス(雄)の性染色体や特定の遺伝子を通じて次世代に伝わる遺伝様式です。Y染色体上の遺伝子は父から息子にのみ伝わるため、家系追跡などに利用されます。
雄性染色体
雄の性別を決定する染色体です。哺乳類ではY染色体がこれにあたり、SRY遺伝子などの雄性決定因子を持っています。
ユニバーサルプライマー
複数の生物種に共通して存在する保存領域に結合するプライマーです。様々な生物種のDNAを同じ条件で増幅でき、種の同定などに利用されます。
陽性対照
実験において、分析対象の物質や現象が確実に存在するサンプルです。検査法が正しく機能していることの確認に用います。
葉緑体
植物や藻類の細胞内に存在し、光合成を行う細胞小器官です。独自のDNAを持ち、母系遺伝することが多いため、植物の分類や進化研究に利用されます。
葉緑体DNA
葉緑体内に存在する環状DNAです。保存性が高く、種間で比較可能な領域を持つため、植物の分類や系統解析に広く用いられています。
ら行
リアルタイムPCR
PCR増幅過程をリアルタイムに観察・測定できる技術です。蛍光物質を利用して増幅産物の量を定量的に評価でき、高感度な検出が可能です。
リアルタイムPCR-SSP法
配列特異的プライマー(SSP)を用いたリアルタイムPCR法です。特定の塩基配列を持つDNAのみを選択的に増幅し、リアルタイムに検出します。
リアルタイムPCR法
PCR反応中にDNAの増幅を蛍光シグナルとしてリアルタイムに測定する方法です。定量性と特異性に優れ、様々な検査や研究に用いられています。
リード
DNAシーケンシングで得られる短い塩基配列断片です。多数のリードを重ね合わせることで、元のDNA配列を再構築します。
リボソーム
タンパク質合成を行う細胞内小器官です。RNAとタンパク質から構成され、mRNAの情報をもとにアミノ酸を連結させます。
わ行
和名
生物の日本語名称です。学名とは別に各国・地域の言語で呼ばれる名前で、地域によって異なる場合があります。