概要
木の枝や昆虫の組織片、魚の切身などの試料から、具体的な生物種名を特定いたします。弊社独自のノウハウと5,000万件を超えるデータベースを活用し、高品質な生物種同定検査を提供しています。これまでに類似の検査を利用したものの、満足のいく結果が得られなかった方は、ぜひ弊社のサービスをお試しください。
検査の流れ
- 試料のクリーニング
試料への付着物は誤同定やPCR不良の原因になるため、適宜トリミングや洗浄を行います。 - 顕微観察と検査のプランニング
試料がどのような生物に由来するか、お客様より頂いた情報と検査員の目視により、大まかな絞り込みを行います。その内容に応じて、検査員がその後のDNA抽出やPCR増幅の手法を選定します。 - DNA抽出
試料ごとに適切な方法でDNA抽出を行います。特に木片や骨片、毛髪などDNA抽出が難しい試料には、特別な方法を執ります。 - DNAバーコード領域のPCR増幅
生物種の同定に使用する遺伝子領域(DNAバーコード)を、測定可能な量まで増幅します。弊社は標準で2領域、かつ最適化されたPCR法により、高い増幅成功率を確保しています。 - DNA塩基配列の解読
DNAバーコード領域の塩基配列(A, T, G, C)を、読取精度に優れるサンガー方式のシーケンサーで解読します。正確を期すため、各DNAバーコード領域を上下2方向から解読します。 - データ解析
2方向から解読した塩基配列データを結合し、ノイズ除去を行います。その後、国際塩基配列データベースに対してホモロジー検索を行います。 - ご報告
2つのDNAバーコード領域のうち、原則としてより良い結果を示した一方の結果を1位から5位までのランキング形式でご報告いたします。
日本食品遺伝科学の技術について
生物種同定検査は基本的な技術ですが、弊社では成功率を高めるためにさまざまなノウハウを取り入れています。その核心は、適切なDNAバーコード領域の選定と高性能なPCR手法にあります。
DNAバーコード領域の最適化
DNAバーコーディングに使用する遺伝子領域として、複数の有望な因子(COIやCytb、16SrRNAなど)が報告されています。その性能指標である「種間識別率(異なる生物種を正確に区別できる割合)」は一般的に60~99%とされ、対象の生物との相性によっても変動します。弊社では生物分類に応じて検査法を細分化し、常に最適な組み合わせになるよう努めています。
PCR手法の最適化
ある遺伝子領域をPCR増幅するとき、その増幅範囲をプライマーと呼ばれる人工DNAで限定します。とりわけ生物種同定検査では、どのような試料に対しても普遍的にDNAバーコード領域を増幅する「ユニバーサルプライマー」を使用します。ユニバーサルプライマーの一般的な増幅成功率は70~99%とされますが、弊社ではほぼ全ての測定系で95%を超えるよう最適化しています。
2領域の併行解析
上記の最適化を行っても、識別不良となる場合があります。そのため弊社の生物種同定検査では、標準で2つのDNAバーコード領域を併行解析し、より優れた結果が得られた一方を報告しています。
生物分類ごとの遺伝子解析領域一覧
分類 | 例 | DNAバーコード領域およびユニバーサルプライマー |
---|---|---|
魚介 | ||
硬骨魚 | マグロ、ウナギ | Fish-COIおよびUniversal-16S |
軟骨魚 | サメ、エイ | Fish-COIおよびUniversal-16S |
甲殻類 | エビ、カニ | Metazoa-COIおよびUniversal-16S |
棘皮動物 | ウニ、ナマコ | Metazoa-COIおよびUniversal-16S |
軟体動物 | 貝類、タコ | Metazoa-COIおよびUniversal-16S |
刺胞動物 | クラゲ、サンゴ | Metazoa-COIおよびUniversal-16S |
動物 | ||
哺乳類 | ウシ、ネズミ | Mammal-COIおよびUniversal-16S |
鳥類 | ニワトリ | Bird-COIおよびUniversal-16S |
両生類 | カエル、イモリ | Amphibia-COIおよびUniversal-16S |
爬虫類 | ヘビ、トカゲ | Reptile-COIおよびUniversal-16S |
虫 | ||
節足動物 | コオロギ、クモ | Insect-COIおよびInsect-16S |
環形動物 | ミミズ、ユムシ | Metazoa-COIおよびUniversal-16S |
寄生虫 | アニサキス、顎口虫 | Metazoa-COIおよびUniversal-16S |
植物 | ||
種子植物 | 木材、イネ | Plant-matKおよびPlant-rbcL |
シダ植物 | ゼンマイ | Plant-trnH/psbAおよびPlant-rbcL |
コケ植物 | ミズゴケ | Universal-ITS2およびPlant-trnH/psbA |
藻類 | ||
褐藻 | コンブ、ワカメ | Algae-COIおよびAlgae-LSU D2/D3 |
珪藻 | 珪藻土 | Algae-rbcLおよびAlgae-LSU D2/D3 |
紅藻 | ノリ | Algae-tufAおよびAlgae-LSU D2/D3 |
緑藻 | アオノリ、アオサ | Algae-COIおよびAlgae-LSU D2/D3 |
菌 | ||
キノコ | 椎茸、トリュフ | Fungi-specific-ITSおよびFungi-specific-SSU V7/V8 |
真菌 | 酵母、カビ | Fungi-specific-ITSおよびFungi-specific-SSU V7/V8 |
細菌 | 乳酸菌、納豆菌 | Bacteria-specific-16S V1/V5およびBacteria-specific-16S V5/V9 ※両方とも解読できた場合は16S全長配列として解析 |
不明な菌 | 製品の変色/異臭部位 | 任意の2領域(経験豊富な検査員による選定) |
その他 | ||
異物/クレーム品 | 骨に見られるもの | 経験豊富な検査員による選定 |
表中にないもの | 生態調査、自由研究 | ご相談により対応 |
よくあるご質問
品種まで同定できますか?
生物種同定検査は原則として種もしくは属レベルで解析されるため、品種を調べることはできません。品種の識別をご希望の場合は、品種判別検査をご利用ください。
産地まで同定できますか?
弊社の検査報告書に地理的情報は付与されませんが、具体的な種名がわかることで由来する地域が推測できる場合があります。入手経路などを含めて、ご自身での判断をお願いしております。また産地の識別を目的とした産地判別検査のラインナップがございますので、適宜ご利用ください。
加工食品に適用できますか?
比較的単純な加工(乾燥、破砕、加熱など)であれば適用可能です。一方、複数原料が混ぜ合わされ、目的の試料が単離不可能な状態の場合、生物種同定検査は適用できません。代替として、ある特定の原料が含まれているか知りたい場合は核酸検出検査を、スパイスなどの混合物から原料を一斉検出したい場合は原材料解析をご利用ください。
交雑種かどうかを調べられますか?
交雑種はすべて母親側の種に同定されるため、交雑種かどうかは識別できません。これは多くのDNAバーコード領域がミトコンドリアや葉緑体内のDNAを標的としていること、そしてこれらは(一部の例外を除いて)父親側の情報が遺伝しない「母性遺伝」であることによります。次世代シーケンサーを使用することで解析できる場合がありますので、お問い合わせください。
FAQ
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